■ 冷凍すりみに砂糖、ソルビトールなどの糖類がはいっている理由を教えてください。
結論から言うと、糖類が魚肉たんぱく質の冷凍変性を防止することがわかっているからである。 もちろん、冷凍によるたんぱく質の変性を抑えるものには糖類のほかに、アミノ酸やカルボン酸の中にも、同じような効果を示すものが知られている。 こうした物質に共通しているのは、水素結合によるか、あるいは静電的に水分子をひきつけ、たんぱく質の分子の反応基と結合できるような基を二つ以上、ある距離をおいて持っていることである。 それらの結合が他の悪い物質との結合を防ぐとともに、まわりの水をひきつけて、凍結の際の水和した水の攪乱を抑えることができるということである。 つまり、たんぱく質分子と直接結合したり、たんぱく質分子表面の結合水と置き換わって結合をしたりして、たんぱく質の変性を防止するというのではなくて、まわりにある水の状態と性質を変化させる作用を介してたんぱく質に働きかけてその変性を防止するということなのである。 それは、たんぱく質の水溶液の中での糖類のたんぱく質変性の効果をみた実験からわかったのであるが、たんぱく質の冷凍変性防止効果は、その中にふくまれているたんぱく質の量よりもたんぱく質と共存している水の中での糖類の濃度により決まる。 わかりやすく言うと、水分が少ない魚の脱水肉においては、少ない糖分の量で魚肉のたんぱく質の変性を抑えることが出来るし、その逆ではより多い量の糖分を加えないと同じようなたんぱく変性防止効果はみられないということである。 すりみを冷凍して、なるべく長期間にわたって保管したい場合は、肉質のpHを極力、中性に保ち、出来うる限り脱水して水分量を減少させ、そして許される範囲でなるべく高濃度の糖類を混合すればよいことになる。 PH調整にはリン酸塩が使われるが、これを嫌う消費者団体もあり、そうした消費者向けには無リンすりみや加塩すりみをその主原料として使うこともある。 しかしながら、そうしたすりみは冷凍中の品質の劣化という面では、リン酸塩をいれたすりみ(無塩すりみ)の半分の期間も品質劣化を防止できないものが多い。 |