商品の容器トレーに赤黒いシミのようなものが付着しているが、これはなにか?

なんらかの要因で汚れのついたトレーに気が付かず、そのまま出荷してしまったということが考えられます。 しかし、その汚れの種類が問題であり、過去に、手に傷のある作業員が完全に治癒しないうちに、現場にはいり、直りかけていた傷口が裂けて、出血し、それが一部の包装トレーの裏側に付着していたという例がありました。
怪我をした人の傷口には、黄色ブドウ球菌などの食中毒菌が多くいて、それが製品に付着して、食中毒事件などを引き起こす要因になったりする例があります。
従って、怪我をした作業員は完全に治癒するまでは、作業に従事させてはならないという鉄則があるのですが、管理できていないメーカーでは、自己申告のない場合は、知らずに作業に従事させていたことが過去にはありました。(現在では、そういった例はないものと確信しております。)
この例は、直接商品が触れている場所には汚れがついていないというものの、目に見えないだけで、ひょっとしたら製品にも付着しているかもしれませんし、血痕だけでなく、食中毒を引き起こす要因となるような細菌が付着していたかもしれません。
 後から考えれば恐ろしいことを現場の作業員がしていたといえます。
この場合、製造メーカーは単なる”汚れ”として処理し、消費者に謝罪しておりましたが、この汚れが血痕であると判定されると、事が問題視され、とうとう、その売り先の店頭から全品返品をくらうことになってしまいました。
【ルミノール発光試験】
ここで、汚れが血痕であると判断された検査方法にルミノール発光試験というものがあります。
ルミノールとは5−アミノ−2,3ジヒドロ−1,4−フタラジオンまたは3−アミノフタル酸ヒドラジドにあたります。融点が332℃〜333℃の白色固体で、今まで知られている化学発光を示す物質の中では最も強い発光を示します。
アルカリ性水溶液で酸素、オゾン、過酸化水素、次亜塩素酸塩などで酸化すると青色の化学発光を示しますが、過酸化水素とヘミンもしくは血液を加えた場合は特に強く発光します。この反応はルミノール発光試験として血痕の鑑定に利用されています。
ルミノールのアルカリ水溶液の発光スペクトルは、溶媒にもよるが約430nm(ナノメートル)に極大をもっています。
ルミノールの発光機構は反応条件で異なっていて複雑ですが、最終生成物の3−アミノフタル酸イオン(の励起1重項状態)が発光体であることは確かです。