商品に薬品臭がするとクレームを受けました。当店では、臭いのする薬品や添加物はいっさい
  使っておりません(2011.10月)

最近、極稀に消費者から「買ってたべたが、いつもの匂いと違う薬品のような匂いを感じたので、気持ちが悪い。調べてください」というような苦情を受けることがあります。
 製造者としての我々は、もちろん、原材料にそのような薬品臭を発する可能性のあるような薬品、添加物は一切使用いたしておりませんので、いつも対応に苦慮いたしておりますが、全国の他のかまぼこ屋さんにも、同様の苦情が寄せられ、傘下の組合員からそうした苦情があるので、原因を調査してほしいということで全国蒲鉾連合会にて、原因調査をしたことがあります。その結果、原料すりみに使用されている一部の魚種(キス、アマダイ、レンコダイ、イトヨリダイなど)の中に、稀にこうした匂いのするものがあることがわかりました。匂いの原因は、カビ臭、泥臭といわれるもので、この匂いのもとは、その魚の生息している海域にいる放線菌や、藻類が生産する物質によるものです。特にガスクロでの分析により、原因物質の多くはジオスミン、2−メチルイソボルネオール等によるものであることも判明いたしております。しかしながら、原料処理段階で、そうした魚を分別することは不可能であり、その海域の環境、季節等により状況は変化いたします。海域の富栄養化、水温、水質の変化をうけて海水中にそうした菌や藻類が繁殖し、それを食べた魚などにカビ臭や薬品臭が生じるといわれています。また、食べる側の人間の臭覚は鋭敏な人と鈍感な人との間に、約1万倍の差があるといわれていますし、普通の人が感じる臭気濃度は、この種の臭いの場合1兆分の1の単位で、非常に敏感なものです。このような希薄な濃度の分析は、通常の化学分析では計量できませんでしたが、ガスクロマトグラフィ質量分析計という計測器が普及してから、なんとか測定できるようになりました。その結果、通常の人の半分の人が感知できる濃度が明らかになり、2−メチルイソボルネオールの濃度は1兆分の5、ジオスミンは100億分の1の濃度であることがわかりました。いずれにしても、臭覚で感じる物質量というのは、きわめて微量なものであることがわかります。

臭いがしないようにする脱臭技術はあるにしても、こうした食品の場合、原料段階でそれを除去することは、原料が天然魚である限り不可能であるといえます。(養殖魚であれば“いけじめ”という方法もとれますが)

いずれにしても、そのような臭いを感じるお客様が発生すれば、原料を見直し、なるべく海域や、魚種、原料スリミのロットを変えて生産するようにいたしたいと思いますが、非常に微量なものであるため、魚種や、ロット、海域の特定などが難しいのが現状です。まず、そのような異臭を感じられたお客様については、商品の交換をさせていただき、その原因と思われる海域と季節の原料を特定し、配合から取り除く努力をしていく以外に方法はないと思われます。