酒を飲んだ翌日に、昨夜のことをすべて覚えているということは、若い頃にはごく当たり前のことであり、私自身記憶がなくなるという飲み方はそれほど多かったわけではない。
しかしながら、最近、じぶんではそれほど酔っていなかったと思っているのだが、朝起きるとどうも昨夜の事が思い出せない日が多くなってきた。 財布の中にはスナックの領収書が2,3枚入っており、勘定だけは済ませて帰ったのだなと安堵したりする。 ただ、酔うほどに想い出の視野が狭くなっているのは興味深いことである。 最初は飲んでいた店の全景が頭に残っているが、しばらくすると、自分の周りで飲んでいた人たちの顔だけになり、やがて、自分の座っていた机だけが.....そして記憶がなくなる直前は自分の酒のお猪口だけが目に残っている。 暑い夏のことであった。昨夜は飲み会があって、風呂に入っていないから(そう思っていた)どうも体が汗ばんできもちが悪い。会社から家へ帰って「昨日、風呂に入ってないから、先に風呂へはいってから飯にする」と妻に言ったところ、「何言ってるの?昨日子供と一緒に風呂に入って子供の頭洗ってくれたでしょうが」と妻が答えた。
寝る前に妻がガソリン代をくれたのだが、これをすっかり忘れていた。(これも酔って家へ帰った日)翌日、財布を見ると、無いと思っていた万札があるではないか.....これは何かの勘違いをしていた...と、本屋で高価な本を買ってしまった。 帰ると、妻が「給料前の金の無いときによくそんな本が買えたわね。ところで、ガソリン代払ってきてくれた?」なんて聞かれて、肝を冷やしたり.......とにかく、記憶が無くなるようになってくると、困ったことになる。
一度、京都で梯子酒をしたことがあった。 ホテルで目を覚まし、財布の中を見ると、同じ飲み屋さんの領収書が2枚入っていた。 これなど、途中で記憶が無くなって、同じ店へ同じ日に2回も寄っているのである。 本当にこういう酒は危険きわまりないので、自重しなければ......
|