結婚前の醜態
今となっては過ぎ去ったことであるが、今思うと当時は我妻はよほど私を愛してくれていたのだと思う。 つまり、結婚前にこのような醜態を演じた者で、結婚までこぎつけたものが世の中にいるだろうか?と思うことがあるのである。 さすがに酒蟷螂といえども、プロポーズするまでは、醜態など見せることはできなかったのだが、いったん結婚の承諾をうけるやいなや、緊張感がなくなり、彼女の家でおやじさんと大酒を飲んでしまった。 
 妻の父親と初対面で、二人で2升近く飲んでしまったのである。  それで、妻になる当時の彼女に家まで送ってもらったときのことである。   我が家の前で子供のように駄々をこねて、妻に愛してるを繰り返し、車を降りて君と別れたくない、もう少し走っていてくれと言って車をなかなか降りてくれないので困った...と妻の後談....しかも、車から降りるや、今度は彼女の車のボンネットを両腕でかかえて持ち上げようとしていたらしい....まさに酒蟷螂に大変身してしまったらしいのである。  彼女にしてみれば、軽自動車の中に閉じこめられて恐竜に襲われているような気持ちになったのではないかと思う。                       
いくら怪力があっても、車はもちあげれないのだろうが、酒が入ると無敵になる自分である。  また、酒が入るとむしょうに女を愛してしまう癖がある。  彼女が好きなら、彼女が乗っている車も好きになるのだ。 しかし、そんな美しい愛の時代があったとは本当に考えられない現在である。   今そんなことをしたら、妻はさっさと子供を連れて里に帰ってしまう(いや、おれが家を追い出されるだけなんだろう。)