傑作その5 かまぼこ

その1かまぼこは不思議元の魚の形が連想できないよ

日本の水産加工品は概して保存が目的となっていた場合が多いが、かまぼこは唯一、今でいうグルメ発想から生まれた加工品であり、他に類を見ない。しかも、それ自体でもとの原料素材である魚の形を想像することができないというのも大きな特徴である。 魚の身だけを取り出して、食べさせようという最高の贅沢発想であったが、これも魚本来の持つ脆弱な組織をまとめあげる為の試行錯誤から生まれたものと推測できる。魚のたんぱくの構造を塩によって溶かした後で、蒸し上げると強靱な弾力をもった組織体に作り替えられるというすばらしい発見であった。最近では、いつでもどこでも食べられるようになったが昔は贅沢品であった。かまぼこの弾力については、数多くの研究がなされてきており、弾力の源は塩容性蛋白であるアクトミオシンであるという説が長く続いたが、最近ではどうもミオシンがその主人公であると言われるようになってきている。