オオクチバスかまぼこ適性について(1992年の研究報告より)

 

舞鶴生き物研究所

所長 辻 義雄

(目的)
関西では琵琶湖をはじめとする日本の湖沼で、外来種であるオオクチバス、ブルーギルといった魚類が、繁殖を続け在来種の減少の一因とも考えられるようになってきている。しかも、彼らが肉食であり、鮎、モロコなどの漁業資源を食い荒らすことで、漁業者の生活を脅かしているだけではなく、その湖沼の生態系までも変化させているという学者もあらわれた1992年に、滋賀県水産加工協同組合より(株)日本食品開発研究所を通じて私の研究室にかまぼこへの適性試験の依頼がきたのである。当時の専門家の話では、年間に3000トンほど琵琶湖から間引いてやると、それ以上に増えずに平衡が保たれ、年間に5000トンを間引くと、絶滅するということであった。 それまでも、フランス料理などへの利用や、滋賀県の地元特産品にしようという考えもあったが、フランス料理に出すくらいの大きさになる前に、その体の数十倍の漁業資源を餌として食してしまうので、そのような利用では数量が限定されてしまっていた。そこで、食品加工の中で、大量の消費が期待できる水産練り製品にスポットがあてられ山陰から北陸にかけては唯一のすりみ生産基地のある舞鶴に相談が持ち込まれたのである。

 

(方法)
当方としては、蒲鉾の原料にするのであれば生魚を使用するというのが鉄則であった(冷凍ではいいものができない)が、最初は配送の都合などにより冷凍したものを当方で解凍し、以下の工程ですりみを製造した。
オオクチバス→解凍→頭落とし、内蔵除去→水洗→採肉→水さらし→水洗→脱水→袋詰
このすり身を錬成し、かまぼこ、天ぷらなどを製造したが、原料が冷凍であるため、その評価は高くなかった。
そこで、今度は生のまま舞鶴へ運んでもらうように手配をし、生からのすりみ製造を行い、かまぼこにしてみた。
生の漁獲で集荷しやすいのが3月から7月、7月から9月、11月から12月と年3シーズンの漁獲がしやすいということだった。当面は単協でも力のある沖島漁協とタイアップして滋賀県全域からバスの集荷ができるようにする。このようにして、長期にわたり、原料適性の試験を繰り返す予定にしていたが、漁協の都合もあり(補助金の関係か?)、わずか半年でバスが送られてこなくなり、研究は中断することとなった。最初は、冷凍と生と分けて入荷したが、オオクチバスの中にブルーギルが40%ほどまざっていたことにより、オオクチバスとブルーギルを分けて試験することにした。
下表はそれぞれのサンプルにより、研究所で定法によりかまぼこにした結果であるそれぞれについて物性試験ならびに官能試験を行い、それぞれの特徴を把握することにしたのである
外来魚の蒲鉾物性試験結果

魚種

検査年月日

水分

H白度

圧縮距離

ゼリー強度

混合(冷凍)
92/01/20
78.0%
59.7
6.5
152
混合(冷凍)
92/02/28
78.5%
57.7
6.6
144
バス(冷凍)
92/03/03
81.0%
60.2
6.9
129
ギル(冷凍)
92/03/05
81.2%
64.4
6.6
112
バス+bpp(冷凍)
92/03/03
81.0%
60.8
7.5
159
バス(生)
92/04/07
82.5%
58.8
7.7
165

※BPPは牛血漿蛋白であり、当時、イトヨリなどの魚類には特にかまぼこ適性を高めることがわかっていたので、添加したものも試験してみた。


(結果)

1)ブラックバスはブルーギルよりも若干弾性値が勝っている。
2)ブルーギルはブラックバスよりも旨みが強いような気がする。また、すりみにしたときの色も白い
3)冷凍した混合品(バス60%,ギル40%)はすりみの水分値が3%多くなると、同じ加水量でかまぼこを造ると弾性値は約20%減少する。
4)ブルーギルについては、弾性値からだけ判断すると北海道の陸上スケソウダラすりみの1級クラスに相当する。
5)牛血漿蛋白を1%添加すると弾性値は20%押しあがることがわかったが、やはり生魚から造るすりみには勝てない
6)物性面では生の方が上であるが、夾雑物が依然として多く、色合いに艶がないので、本格的な板ものへの使用は難しい。かなり水さらしをしないとやや生臭いが、揚げ物などへの一部使用は可能であろうと思われる。
7)バスの生魚からのすりみは保水力も強く、圧縮距離の値が冷凍原料よりもかなり高い。